記録と自戒の念を込めて書き殴ります。
読んでくださった人の中には「甘えんなよー」とか「覚悟してきたんだろ?」とか「こっちはもっと大変だよ」とか思うところがあるかもしれませんが、突発的な感情の起伏には個人差が大きいと思いますのでご了承ください。
的を得たアドバイスとストレス発散の乾杯ならば、いつでも大歓迎です。
前提と現状

私は2024年1次隊「PCインストラクター」隊員として南アフリカ共和国の地方に派遣されています。
配属先は現地の児童・生徒及び現地の教員のみの日本でいうところの小学校です。
JICAからの要請内容は「生徒・児童及び教員に教育活動において有効なICTスキルを身につけさせてほしい。」ということでした。ざっくりいうと。
私は前職場においてコロナ禍におけるGIGAスクール構想(全生徒へのICT教育の推進)の前倒しの際に、様々な研修を受けて主担当として活動していたことがあったので、同様にICT機器のもつ得意分野を教育現場において、有効活用する方法を共有出来たら良いなと漠然に考えていました。
しかし、いざ期待半分、不安半分で赴任してみると石碑のようなPCの屍が倉庫に積まれていただけでした。
Wi-Fiはあるにはあるのですが、超々微弱&事務室周辺のみ有効です。つまり使えません。しかも時折、計画停電のサプライズ付きです。
しかし、任地校とJICAが事前に要望と状況を判断し要請を締結している以上、工夫して取り組む他ありません。
赴任当初の数か月は黒板にキーボードを板書して書き写させる、自前のパソコンをスクリーンに映写してクラスでタイピングゲームに取り組んだりしていました。


しかし、生徒は楽しんでいてくれていても身になっている気がしません。教育的効果が薄いと日々感じていました。
また、教員に対してもPCを使った業務が浸透していないので、PCスキルの研修などが求められていません。つまり、困ってないので求めてません。
2年足らずで居なくなる私に対しての期待が、薄いことも事実でしょう。
強行することも可能でしたが、「こんな便利なんだから使いましょう!」と押し付ける気もありません。
高度に作りこまれたエクセルシートを隊員が用意して、便利ゆえに依存的に使用させたものの、隊員の日本帰国後に現地でイジって壊れて、直せない…。困った…。なんて話も聞きました。
それでは、上記の石碑(PC)を送ってさようならの慈善活動風企業と変わりません。
赴任当初は「なんでこんな要請だしたんだ…?全然、需要が無いぞ…。何しに来たんだ。」と日々モヤモヤしていました。
そんな現状を校長に共有したところ「PCの授業とJUDOとやら?の授業も同時にやってみない?マナーとか身に着くんでしょ?」と唐突な打診がありました。

現状のPCの授業に疑問を感じていた私は二つ返事で快諾しました。
「PC」と「柔道」授業の両立
赴任からさらに数か月が経ち、各クラス週の2コマ中、1コマは「PC」、もう1コマは「柔道」を指導することになりました。
PCの授業では引き続き「パソコンの仕組み」やキーボードやマウスなどの「周辺機器の紹介」などを実施し、柔道の授業では唯一の教材である自前の柔道着を使用して「柔道着の着付け」や「崩し」などを体験させました。どちらも目新しさからか、好評だったと自負しています。








そんな授業形態で進めていくことさらに数か月。柔道の授業の方に限界が近づいてきました。教室で柔道着一着のみの現地語授業では、よく頑張ってくれたとは思います。しかし、後半は飽きていたのか柔道着に噛みついていた子もいました。
しかし、そんな工夫、工夫の日々に一筋の光が差しました。色々なつてを駆使して南アの柔道関係者の方から畳を貸与していただけることになったのです。(参照)
柔道着はまだないけれども、大きな一歩です。感謝!大感謝!
畳が届いてからは、離れではありますが、校長先生にお願いし鍵のかかる畳常設の専用教室を用意していただきました。




そして、次の学期からは私の担当するタイムテーブル(時間割)からは「PC」の文字が消えました。

やはりICTスキル(PC)に対する需要は無かったようでした。…まぁ良いでしょう!
柔道の授業に向けて
柔道の授業も専用教室からではなく、まずは普段の座学の教室から始めました。
「畳はプレトリアの道場からはるばる運んでいただき、お借りしている。(感謝の気持ち)」、「日本では畳の上では靴のまま上がるのは失礼にあたる。(異文化理解)」、「柔道のスキルを教えるけども柔道教室以外では使用してはいけません。(決まりの遵守)」、「入退室や練習前に礼をして、感謝やリスペクトを伝えましょう。(畏敬の念)」など校長先生の要望通り、マナーや躾、礼儀に近いことなど簡単にガイダンスを行いました。
割と静かに聞き、時折頷き、約束は守れるとのことでしたので、いよいよ念願の柔道教室に移動しました。教室前にも多数、同様の内容を掲示しました。
移動して教室に入ったいなや狂喜乱舞です。リスペクトのリの字もありません。

すかさず全員教室から叩き出しました。まず靴を脱げ。
授業開始
次回の授業からは入り口で一人一人、靴を脱いで一礼をして入室することを徹底しました。(もちろんガイダンスでは説明済み)
時には手を合わせて入室してくる子や、すでに教室で裸足の子、「○○にしか祈りません!」という信心深い子などが居ましたが、大目に見ました。無論、入室済みの生徒は相変わらずの狂喜乱舞です。
そして、授業時間の半分程度を使用し、集合→入室後は今日の内容の説明のお時間。
最初は回転運動の指導から始めました。ポイントを説明し私が実演。「前転」の実演→大興奮状態に突入→暴走です。
もちろん声掛けはしますが、興奮状態で周囲の情報が遮断されている状態…。完全にキマってる…。
そんな状況で授業しても教育的効果は皆無に等しいので一時、中断です。そして仕切り直し。
次に「後転」の指導。~以下略~
たった2コマで喉がいかれました。
工夫と粘り強い指導
瞑想が30点くらいのクオリティで5秒くらいできるようになった頃でした。

次の授業では列を作って、一方通行で回転運動を行うようにより明確に指示しました。
そこで、とある事実が判明します。
彼らは列を作れません。そして、まだ譲り合うという概念が醸成されていません。
しかし、柔道という新しい技術や私には興味と期待があります。
窓から覗く興味津々のキッズ→
つまり「興味」×「興奮」-「規律」=「大暴走」という現状に至っています。
日本では「授業の号令は軍隊的だ!」とか「大人になったら、前ならえなんてしない!」などと一部では叫ばれていますが、あくまであの行動は教育過程の一部であり、本質的に学ぶべきものはその奥にあると思います。ですが、小学校低学年などの発達段階でそれを伝えても理解できないので、画一的に指導しているだけです。
やっぱり「型」を作ってから「型破り」なことに挑戦する大切さってあると思います。一部の人を除いて。
話を戻します。
もちろん自分の英語力、現地語力、指導力を棚に上げるわけではありませんが現状として、新しい授業を受ける段階まで規律が指導されていないと感じます。現地の正規教員でもない私が”そこ”を指導するのも違和感があります。
そこで、校長先生にはTT(授業者と指導教員の2人体制)の徹底を再三お願いしています。まぁ再三ということは実現していません。
そんな現状もあり、とあるクラスの授業でさすがに怒ってしまいました。
「リスペクトの無い生徒は外に出す!真面目に受けたい生徒優先!」と常に宣言しているのですが、リスペクトの無い(態度的に)生徒が半数を超えたので、ほぼ全員叩き出しました。
ある意味、授業放棄ですがこちらも「お願いだから柔道を教えさせてください…」のスタンスは1ミリも無いので、そうしました。
その後、外ではシュンとなっていたので再度、静かにする約束をしたものから教室に戻しました。
…でどうなったと思いますか?

狂喜乱舞アゲインです。
で、授業後は笑顔で手を振ったり、ハグして帰って行きました。嘉納先生助けてください。
工夫の余地と自身の反省
基本的に意図せず感情的になるのが恥ずかしいと思っているタイプの人間(熱くなることはカッコいい)なので、退勤中からしっかり考え、反省しました。
- 彼らは私に迷惑をかけたいとか、嫌がらせをしたいと思っているわけでは無い。
- 「柔道」はなんだかわかないけど楽しそうと感じている。
- 怒ってはいるんだけども鞭で殴られるわけでは無い。他の先生も来ない。
これらが彼らの大まかなマインドです。
- 「生徒」も「教員」も互いにリスペクトしあって授業は進行するものだ。
- この「畳」や「柔道着」は”わざわざ”貸していただいているものだ。
- 私は”学校に依頼されて”「柔道」の授業をしている。
- 「柔道」を学べば君たちの将来の新たな選択肢が増やせるかもしれない。
これが私のマインドです。改めて考えると生徒自身からしたら関係のない押し付けかもしれません。
そもそも「柔道」などの修業に対するリスペクトは、日本人ですら個人差が激しいのに南アの小学生に理解しろ!という方が難しいです。
帰り道
感情的になってしまった後、上記のようなことを考えながらストレス発散の為、タクシーで1時間ほど離れた街のジムへ向かいに大通りへ歩いていました。
すると向こうからG4(小4)の生徒たち5名ほどが歩いてきました。
キッズ「何してんのー?どこいくのー?」
わたし「町に行くんだよー」
キッズ「(私の荷物を見て)日本帰るの…?」
わたし「帰らないよ!笑」
キッズ「柔道の授業は終わりなの…?」
わたし「帰らないって!来週あるよ!」
キッズ「良かった~。ハグして~!」5人とも手ベタベタ
わたし「タクシー来たからまた明日ね!」
キッズ「(手フリフリ)」
乗車率150%のタクシーに乗った後も
乗客「あなたのこと知ってるよ!」
わたし「本当に?ありがとうございます」こちらは知らない
乗客「カラテ?柔道?を教えてるんでしょ?」
わたし「柔道ね!それとPC!」
乗客「良いね。疲れてるだろうから座って!」
わたし「ありがとうございます!けど、大丈夫!笑」
乗客「SHARP!」
ストレスは消えていました。
もちろんいまだに「チーチョン!チーチョン!」言って来るお○さんも居るけども、普段からこの優しさや、南アフリカに流れる時間に包まれて生きています。

そして、今日もしっかり大きな声で狂喜乱舞中のキッズを指導しました。
そんな中でも時折、柔道”っぽい”場面も増えてきました。柔道着もお借りすることが出来ました。



冒頭にも書いた通り、私はできた人間では無いので突発的にカッとなることも多々あります。すんません。
しかし、一生懸命になにかできることを探し、ぶつかり、腹が立ち、乗り越えるか回避する。
そんなサイクルで成長し合える、残り10か月にしたいなぁと思っています。


ある意味この日々の葛藤も「柔道」が繋いでくれた修業でしょう。精力善用、自他共栄。
これからも我が「道」を進んでまいります。お読みいただきありがとうございました。SHARP
追伸:PCインストラクター派遣です。
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