灼熱の日本を旅立ち、これまた灼熱であろう東南アジアへ向かおうと、私は人生初の成田空港へ向かっていた。
無論、一人旅。旅は身軽な方がカッコいいと思っているからだ。期間は約10日間。
今回の旅の軍資金は、大学の卒業祝いとして祖母から頂いたお金、約20万円。私の家庭は決して裕福とは言えず、これまで日本から出たことがなかった。つまり、これが人生初の海外旅行となる。
なぜタイに向かっているのかというと、いろいろな意味で”悪い”先輩たち(学歴もお金もあるが、人として大切なところのネジが少し緩んでいるような人たち。けれど、それがまた魅力的でもある)が勧めてくれたからである。
そして何より、「カオサン通り」という場所に強く惹かれていたからだ。
このカオサン通りは「バックパッカーの聖地」や「世界一周の始まりの場所」とも言われているらしい。ドラクエ好きの私にとって、まるで冒険のスタート地点のようで、その魅力に引き寄せられたのだ。
そんなこんなで、出発の5時間前には成田空港に到着。ながーーい電光掲示板を見上げ、行先を確認しながらそのスケールに感動。待ち時間には、イキって日本での最後の食事として牛丼特盛を堪能し、しみじみとした気持ちに浸っていた。
受付開始までの間、空港内を歩き回り、海外旅行に使えそうな便利グッズや、バックパッカーにぴったりなコンパクトになる寝袋や折りたたみ式の食器などを物色。すでに心は完全にバックパッカー気分だ。そして、無印良品でぶら下げられるポーチをゲット(ちなみに、これは今でも現役で使っている)。
そして、ドキドキの搭乗手続きへ。勝手に緊張していたものの、当然のごとく日本語での対応だったので、何事もなくクリア。成長を感じた瞬間だった。セルフスモールステップ。
次は身体検査と手荷物チェック。ここでもやっぱり緊張。ベルトを外し忘れて警告音が鳴ってしまったが、これもなんとかクリア。もう完全に気分はバックパッカー。
周りを見渡すと、世界一周の旅に出発するかのような面持ちで他の旅行者を見守る私。キャリーケースを引いている他の旅行客を少し見下してしまう自分がいる。なんでやねん。
いよいよ、念願の飛行機に搭乗。約6時間後には異国にいる自分を想像して、ドキドキとワクワクが止まらない。
こうして、自称バックパッカーのタマゴである私は、初めての海外旅行に向けて旅立つのであった。